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2011年10月05日

東中野上映レポート 20

トークゲスト 小川武さん

今日のゲストは、『わたしたちの夏』のスタッフでもあり、近年では『マイ・バック・ページ』などでもご活躍の、録音・整音技師の小川武さんです。
福間監督は、「現場での音録りがうまくいかず、編集の秦さんから、これは整音をちゃんとやらなきゃいけないと言われて、小川さんを紹介してもらったんだよね」と、小川さんとの仕事のきっかけから話しはじめます。「で、実際小川さんと会ってみたら、最近の日本映画は、きちんと〈世界の音〉が録れていないというところで意見が一致しちゃった」。それを聞いた小川さんは、「僕の師匠は久保田幸雄という人で、その人からそこにある音を活かすことが当たり前なんだということを学びました。だから、録音の仕事は雑音を排除してとにかく台詞をとるということに傾きがちだけど、僕はいろんな状況をひっくるめて映画の音なんだと思ってるんです」。

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監督から最初に画をみたときの感想をたずねられた小川さんは、音が入る前の『わたしたちの夏』の状態を率直にこう語ります。「最初にいただいたときは、もう、どうしようと思った。とにかく雑音が凄い。蝉の声、風の音、録音機器自体のノイズ……これはえらい仕事引き受けちゃったかなと(笑)。でも、最初からきちんとシナリオがあって、設計図に添って音を入れていくのではなくて、自分で監督や映画の意図を読み解いていく作業からはじまったことは、おもしろい経験でした」。
福間監督は、録音技師としての小川さんの批評眼が映画に介入したところが、非常にいい影響を生んだと語ります。「小川さんは、僕がやりたいと思うことをはじめから、ダメですよ、と言うんじゃなくてそれを活かして意見を言ってくれた。たとえば、冒頭の千景のショットに戦争の音を入れたいと言ったときもそうだった」。小川さんは、「冒頭から戦争の音が入るというのはいいと思ったんです。ただ、それが続きすぎると、それが作品全体のテーマであるように思われて、作品の魅力を限定してしまうと思った。監督の意見をひとつひとつ聞きながら、こうしたらその意図が伝わるんじゃないですか、というかたちで提案をしていく」とご自身の仕事のスタンスをはっきりと示されます。監督は、小川さんの音を聞いて、冒頭のメイン・タイトル『わたしたちの夏』を赤から白に変えたというエピソードを紹介しました。

福間監督は、小川さんとの仕事を通じて得た、映画の音についての感触を次のように語っていきます。「ゴダールは、サイレント映画は夢の世界だといっているけども、確かに音のない状態というのは、ある意味ではファンタジックな状態なんだよね。それが音が入ることで現実になっていく」。それに対し、小川さんもまた福間監督との仕事を通じて感じたことを返答します。「『わたしたちの夏』を見ると、何度見ても自由だなあ、と思う。映画表現の自由さを感じる。映像にない音をつけるということはむずかしいけど、それがこの映画にはなじむんですよね。すこしも浮かない。それが映画表現としてちゃんと成り立ってしまう。楽しんでやらせてもらいました」。

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福間監督が「自分でも不思議に思うのは台詞にそれほど執着してなかったのに、台詞がちゃんと聴こえる映画になったということなんだよね」と語りかけると、小川さんからは鋭い指摘が返ってきます。「それは監督が詩人であるということもあるけど、この映画の登場人物はやっぱり台詞だけをしゃべってるんじゃなくて、詩をしゃべってる。そうすると観客はやっぱり言葉に集中するようになるから台詞がきちんと聴こえるんだと思いますよ」。

福間監督は最後に、「小川さんには感謝の気持ちでいっぱい。皆さんもこれから録音・小川武のクレジットのある映画に注目してください」と観客席に語りかけました。
優れた録音技師であるというだけでなく、優れた批評眼の持ち主でもある小川武さんの魅力が、普段はあまり映画の裏からの仕事を知る機会のない人々にも開かれたトークショーでした。小川さんの次のお仕事はポスト・プロダクションに入った谷口正晃監督の最新作『シグナル』だということです。公開が待ち遠しいですね。

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宣伝スタッフ 河野まりえ
写真撮影 松島史秋



posted by tough mama at 13:50| Comment(0) | イベントレポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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